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研究紹介

全国がん登録を用いたがん患者の自殺、心血管死の実態調査の研究計画

【背景】
がん患者はがんの罹患に伴い強い心理的苦痛を経験し、うつ病などのリスクが高いことが報告されています。また、海外では、がん患者の自殺リスクは一般人口よりも高いことやがん診断から期間が短いほど自殺や心血管死のリスクが高いことが報告されていますが、わが国における全国的な実態は明らかになっていませんでした。

【目的】
本研究は2016年に開始された全国がん登録を利用し、わが国全体のがん患者を対象にがん診断後の自殺、自殺以外の外因死(事故死など)、心血管死の実態や一般人口と比較したリスクを明らかにすることを目的として、研究計画を作成しました。

【研究方法】
全国がん登録データを用いて、2016年1月以降に日本で診断されたがん患者のうち、がん診断から6ヶ月以内に①自殺、②自殺以外の外因死、③心血管疾患で亡くなった方を同定し、それらの死因による死亡リスクを一般人口と比較しました。また、がん診断後の時期ごとに自殺や心血管死による死亡リスクを解析しました。

【結果】
対象となったがん患者546,148人のうち、がん診断6ヶ月以内に84,601人が亡くなり、そのうちがん以外の死因で亡くなっていたのは7,477人でした。がん診断6ヶ月以内に自殺では145人、自殺以外の外因死では298人、心血管疾患では2,366人の方が亡くなっており、一般人口と比較した死亡リスクはそれぞれ2.68倍、1.49倍、1.38倍でした。自殺場所の7割以上は自宅敷地内であり、病院内での自殺は全体の5%以下でした。また、自殺、自殺以外の外因死、心血管死のいずれも、がん診断1ヶ月以内のリスクが最も高いことがわかりました(一般人口と比較して各々4.06倍、2.66倍、2.34倍のリスク)。

【結論】
がん診断後の自殺や心血管死のリスクは一般人口よりも高く、特にがん診断1ヶ月以内のリスクが高いこと、大半の自殺は自宅敷地内で発生していることが明らかになりました。がん診断前後の外来通院の時期から苦痛・ニーズを評価し、それに応じたケアや支援を行うことが自殺対策としても重要と考えられます。今後もわが国におけるがん患者さんの自殺、心血管死の実態のモニタリングを継続しながら詳細なリスク因子を明らかにすることで、根拠に基づく自殺対策を推進する必要があります。

Harashima S, Fujimori M, Akechi T, Matsuda T, Saika K, Hasegawa T, Inoue K, Yoshiuchi K, Miyashiro I, Uchitomi Y, Matsuoka YJ. Death by suicide, other externally caused injuries, and cardiovascular diseases within 6 months of cancer diagnosis (J-SUPPORT 1902). Jpn J Clin Oncol 2021; 51(5): 744-752.

DOI: 10.1093/jjco/hyab001